奥歯が欠けたら放置してはいけない理由
食事の際、硬い物を噛んで歯が欠けてしまうことがあります。アーモンド類、せんべい程度の硬さの食べ物であれば、噛んでも歯が欠けることは滅多にありませんので、欠けたもしくは折れた歯に何かしらの問題が発生していると考えられます。さらに運動中、歯に衝撃を受けてしまい歯が欠けたり折れたりすることもありますので、痛みがなくてもすぐに歯医者でお口の中を診てもらいましょう。治療しないまま放置するのは厳禁です。本来、歯はエナメル質という固い層で覆われていますが、何かしらのトラブルで歯が欠けたり折れたりすると、エナメル質が剥がれてその下の象牙質がむき出しになる恐れがあります。柔らかい層でできている象牙質は、虫歯菌や酸に反応しやすいため、虫歯になるリスクが高くなり、温度や振動が歯の中にある神経まで伝わりやすくなります。そのため、歯磨きや食事の際に痛みを感じることが多くなるでしょう。
大きく歯が欠けると神経がむき出しになって、細菌感染を起こし炎症が生じることがあります。そうなると、激しい痛みに襲われる可能性があるので注意が必要です。
奥歯が欠ける原因
虫歯
虫歯は、虫歯菌が作り出す酸に歯が溶かされる病気です。歯の表面は非常に硬いエナメル質で覆われ、その中に柔らかい象牙質という層があります。虫歯菌によってエナメル質が溶かされると、小さい穴が空いてそこから虫歯菌がどんどん歯の中まで入り込み、柔らかい象牙質を溶かしていきます。象牙質はエナメル質に比べて溶けるのも早いので、エナメル質に何の変化がなくても、象牙質が溶けてなくなると、中が空っぽの状態になります。歯の中が空洞だと歯は丈夫さを失い、食事の際に硬い物を食べると虫歯菌に侵された部分が欠けてしまうことがあります。
歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしり・食いしばりは体重の約2~3倍の力が歯にかかるとされています。そのため、歯ぎしり・食いしばりをする方は、歯が欠けてしまうことがよくあります。体重50㎏の方は100~150㎏の大きな力が歯にかかっていることになるためです。歯は硬いですが、毎日大きな負担をかけ続ければ弱って欠けてしまいます。健康的な歯より神経を取った後の歯は特に脆弱なため、歯ぎしり・食いしばりにより大きく欠けてしまうケースが多いです。
転倒や衝突
(転んだ・ぶつけたなど事故による外傷)
転んだりぶつかったりなどの瞬間的な衝撃で歯が欠けることもあります。例えば、運動中に激しく転倒したり交通事故にあった際など、強い衝撃を受けると歯は欠けてしまいます。歯ぎしりや食いしばりの場合は、長期間の強い力によるダメージの蓄積により奥歯が欠けたりすることがありますが、転んだりぶつかったりして衝撃を受けた際には、前歯が欠けてしまう場合が多いです。
酸蝕歯
歯の表面はエナメル質という硬い組織で保護されていますが、酸に弱いという性質があります。酸性の強い食べ物や飲み物(ワイン、お酢、スポーツドリンク、レモン、炭酸飲料など)を頻繁に摂取するとお口の中が酸性にかたより、歯のエナメル質が溶かされてしまいます。酸でエナメル質が溶けると歯は脆くなり、この状態の歯を酸蝕歯(さんしょくし)と呼びます。健康な歯より脆い酸蝕歯は、虫歯になりやすく、欠けやすいのが特徴です。
摂食障害(過食症、拒食症)、逆流性食道炎、ドライマウス、つわり、アルコール依存症が原因の場合もあります。
かみ合わせの乱れ
上下で14本ずつある歯が正しくかみ合わさっていれば問題はありませんが、かみ合わせが乱れると特定の歯に大きな負担がかかり、ダメージを避けられず結果的に弱くなります。その結果、歯にヒビが入り、欠ける原因となります。
奥歯が欠けた・折れたらどうしたらいい?
歯が欠けたり折れたりしてしまうと、再び元に戻すことはできません。放置しても新しい歯が生えることもないので、歯の状態をさらに悪化させないためにも早めに歯医者で治してもらうことが必要です。早めに歯医者を訪れれば、最小限の治療で済む可能性が高いです。欠けたり折れたりしてから時間が経っている場合でも、痛くないまま悪化している場合があるため、必ず歯医者で必要な検査や治療を受けましょう。
虫歯や治療で弱くなった奥歯が欠けた
治療中で弱くなっている奥歯が欠けた、虫歯がある奥歯が欠けた場合、放置しないで速やかに歯医者で必要な処置を受けましょう。治療中の歯を欠けたままにしていると、さらに大きく欠ける恐れがあります。欠けてすぐであれば簡単な処置で済む場合もありますが、大きく欠けてしまうと神経を取る治療が必要になることもあります。
また、欠けた治療中の歯根をそのまま放置すると、菌が歯の中に侵入して炎症が広がり顔まで腫れてしまうこともあるので注意してください。欠けた部分が小さい場合、専用の樹脂で修復できる可能性もあります。
ぶつかって歯が折れた(抜けた)
事故などで衝撃を受けた際、歯が折れた(抜けた)らその破片(歯)を牛乳に入れて乾燥させないようにし、歯医者までお持ちください。折れた(抜けた)歯を再植できるかどうかの目安としては、折れてからの時間が経っていないこと、歯の周りにある歯根膜の残り具合によって決まります。歯根膜は、流水で洗浄したりすると剥がれてしまいますのでお気を付けください。牛乳の浸透圧であれば体液に近いので、歯根膜が剥がれるのを防げます。
牛乳が手に入らない場合は、飲み込まないようにお口に含み、舌の下に入れましょう。
歯ぎしり・食いしばりで奥歯が欠けた
歯ぎしりで奥歯が欠けた場合、欠け方によって銀歯や詰め物で治していきます。大きく欠けて神経に影響がある場合は、神経除去治療を行って最終的に大きな被せ物をします。歯ぎしりをする方は、マウスピースを装着することで歯が欠けるのを防げます。保険治療であれば約3,000~5,000円で作製可能です。(材質により費用が異なります。)
詰め物や被せ物が取れた、外れた
セラミックで被せたり詰めたりした場合、欠けるリスクが伴います。欠けてざらつく部分を整えるだけで済む場合もありますが、大きく欠けてしまうと再度詰め物や被せ物を作製する必要があります。取れた物を自分で付けようとする行為は大変危険です。詰め物を無理やり押し込むと歯が欠けたり、詰め物自体の変形に繋がる恐れがあります。また、市販の接着剤で付けてしまうとかみ合わせに支障が出たり、歯に接着剤が付いて取れなくなったりして、来院いただいても再着することが困難になる場合があります。これが原因で歯が欠けると、最悪の場合抜歯になることがあります。
奥歯の根元から折れてしまった
奥歯全体が折れた場合、歯の根っこにも悪影響が及ぶ可能性が高くなります。折れた根っこから細菌が入り込んで悪化する前に、歯医者で適切な治療を受けることが必要です。残った歯に何も問題がなければ抜歯は避けられます。
奥歯ごと抜けた
車での事故や誰かに殴られたなど、強い衝撃で奥歯がそのまま抜けるケースがあります。この場合、まずケガの治療を優先し、抜けた奥歯は生理食塩水などに入れ、乾燥しないように保管することが大切です。30分以内に抜けた奥歯を歯医者に持参すれば、元に戻せる確率が上がります。
奥歯が欠けた、折れた時の治療法
歯の欠け方が小さい場合の治療
欠け方が小さく、歯の根っこや神経まで影響が少ないときは、セラミックやコンポジットレジンで欠けた部位の修復が可能です。ほとんどの歯を残せて、見た目にも影響が出ずに治ります。
歯は破損したものの根が残せる場合の治療
差し歯(クラウン)
歯の根っこが残せる場合、「クラウン」という差し歯が使用できます。残った歯を土台にして、人工的に作製した銀歯を覆い被せる治療です。折れた歯の根っこは細菌感染している場合が多いため消毒を数回おこなってから歯を補強し、クラウン治療に進む場合が多いです。
ただし、歯の根っこが残っていないと差し歯にすることはできないので、根っこから歯が抜けたケースには適用されません。
歯が折れて神経や根っこの状態が悪く、抜歯が必要なときの治療
ブリッジ
ブリッジという治療をご存知でしょうか?この治療では、抜歯した歯の両側の歯を土台にして、橋のように繋げた人工的な歯を被せていきます。固定式で安定性があり、入れ歯のようにカタカタ動かないのがメリットです。ただし、自分の健康な歯を削って土台にするので、大きな負担が支える両側の歯にかかることになり、歯の寿命が短くなるデメリットがあります。また、食事の際にブリッジの隙間に食べ物が詰まりやすいので、虫歯や歯周病が進行しやすいことがあります。
義歯(入れ歯)
入れ歯は2種類あり、歯が全部なくなった場合は「総入れ歯」、歯が複数残っている場合は「部分入れ歯」を使用します。保険の範囲内であれば費用が安く抑えられるのが魅力です。ただし、天然歯に比べ約20~30%の力でしか噛めなくなり、硬い物がしっかり噛めないことがデメリットとして挙げられます。さらに部分入れ歯を使用する際、クラスプという金属の留め具が入れ歯の支えになりますが、健康な歯や歯茎に大きな負担がかかってしまいます。総入れ歯は、上の歯は上顎の粘膜にくっつけ、下の歯は歯茎の上にくっつけて使用しますが、食べ物の熱さ・冷たさや味を感じにくくなることがあります。
インプラント
歯の支えとなっている骨に穴をあけ、人工的に作った歯の根っこを埋入し、その上から人工の歯を付けていきます。固定式なので本物の歯のように硬いものもしっかり噛め、さらに他の歯がダメージを受けないのが魅力です。ただし、インプラントを骨に埋めるには手術をしなくてはならず、保険適用外なので高額な費用がかかるのがデメリットです。インプラントを入れた後も、定期的に歯医者に通ってケアを続けることが大切です。
奥歯が欠けたのにすぐ歯医者に行けない時の注意点
鎮痛剤を使用する
日曜日や祝日、ゴールデンウイークなどの大型連休で歯医者が開いていない場合、痛みがあれば鎮痛剤を服用し経過観察しましょう。休日があけたら、できる限り早めに歯医者を受診してください。歯が欠けた原因によっては、歯自体がかなりのダメージを受け、歯の神経や根っこ、歯茎にも何らかの影響が出てくることがありますので、歯医者を受診せずに鎮痛剤の服用のみを継続するのは危険です。歯が欠けたのに治療しないままだとさらに欠け、尖ってしまった歯でお口の中が傷つく可能性があります。
欠けた部位を触らない
あるはずの歯が欠けてなくなると、気になって手や舌で頻繁に触ってしまいがちです。しかし、繰り返し触ることで欠けた部位に細菌が侵入して炎症が生じたり、弱ってグラグラしている歯がもっとグラグラしてしまう可能性があるので、欠けた部位は触らないようにしましょう。欠けた歯でも治療すれば良くなるケースもあります。二度と生えてこない永久歯がなくなると、人工的に歯を入れることになりますが、歯の根っこが残っていれば被せ物で治療することが可能となります。欠けた歯はなるべく触らずそのままの状態で歯医者までお越しください。
欠けた歯を保存する
欠けて取れた歯は、保管してなるべく歯医者までお持ちください。歯医者に欠けた歯を持ってくる際、清潔な布に欠けた歯を包んでお持ちください。欠けたうえに粉砕したり根っこから大きく欠けてしまった歯は使えませんが、被せ物や専用のプラスチックなどで治療できる可能性があります。
歯が欠けた場合は必ず歯医者で治療を受けて頂き、ご自身で治したりすることはないようにお願いいたします。市販の接着剤で欠けた歯を付けてしまうと治療が不可能になることがあります。
被せが取れてしまった場合
歯が欠けたのではなく被せ物が取れてしまったケースもあります。保険適用内で作った金属の被せ物は時間が経つと劣化して外れてしまう可能性が高いです。被せ物が取れた場合は失くさないように保管して頂き、なるべく早めに歯医者を受診してください。この際も市販の接着剤で付けるのは大変危険です。人工的な被せ物が取れても、早急に治療を要することはありませんが、治療しないままでいると歯がさらに弱くなって欠けてしまったり、虫歯が進んでしまうこともあります。1ヶ月以内には歯医者で治療を受けて取れた被せ物を付けてもらいましょう。被せ物が外れたまま放置するのは危険です。
Q&A
ストレスが原因で奥歯が欠けることはある?
ストレスが直接的な原因となって歯が欠ける可能性は低いです。ただし、ストレスが原因の歯ぎしりを続けていると、歯が大きなダメージを受け続け、歯が欠けることがあります。
また、ストレスが原因で体の免疫が弱くなると、虫歯の進行が早くなって歯が弱くなることで欠けるケースもあります。
欠けた奥歯の歯磨き方法は?
歯が欠けても痛みがない場合、歯磨きして頂いて大丈夫です。ただし、欠けた歯は脆弱化しているので、弱い力で磨いてください。
また痛みがあるときは、痛い箇所に触れないように磨くようにしましょう。
奥歯が欠けても痛くないから大丈夫?
歯が欠けると痛みが出ることが多いです。しかし、虫歯や外傷で歯の神経が死にかけている場合、痛みが現れない可能性があります。
「歯が欠けたけれど痛みを感じないから大丈夫」という理由で診察を受けないでいると、知らない間に虫歯が広がっていることがあります。
そのため、痛くなくても歯が欠けたらできるだけ早く歯科医院を受診しましょう。
欠けた歯が黒いのはなぜ?
欠けた歯が黒いのは虫歯が原因だと考えられます。虫歯が進行すると、歯の中にある象牙質が柔らかくなる軟化が起こり、変化に気付くのが遅くなるため、歯が欠けても痛みがないという状態になります。
痛くないからと欠けたまま治療を受けない方もいますが、できるだけ早く歯科医院を受診して、欠けた歯の治療を受けることが必要です。